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「自分のものにしたいとかこの人の時間をもらいたいとか、愛も恋もエゴなんじゃないんですか?」

絡新婦ぽぴ×詩野(たんぺ)×月ミるな 愛を語り尽くす座談会

*この記事は映画『男の優しさは全部下心なんですって』パンフレットに収録された座談会を、「ミスiDクラブ」試し読み記事として特別に公開しています。
公式サイト https://otokonoyasashisa.com

五味未知子(ミスiD2018)が出演し、ポスタービジュアル写真を みてぃふぉ(ミスiD2016)が撮影するなど、ミスiDとの関わりも深いこの作品。
そんな『男の優しさは全部下心なんですって』を、ミスiD2021ファイナリスト3人に実際に観て語ってもらいました。
*映画のストーリーに触れる部分があります。本編をまだ観ていない方はご了承のうえお読みください。
 
◉たんぺ
2000年生まれ。ミスiD2021にて「SPOTTED賞」受賞。
https://miss-id.jp/nominee/16571

◉絡新婦ぽぴ
2002年生まれ。ミスiD2021にて「アメイジングミスiD2021」受賞。
https://miss-id.jp/nominee/16873

◉月ミるな
ミスiD2021にて「シスターフッド賞」受賞。
https://miss-id.jp/nominee/17989

 

―幸せが来た瞬間、悲しいことがあって、まさにメリーゴーランドの浮き沈み(月ミるな)

たんぺ:この映画、いい意味で疲れました。好きになった人にすでに彼女がいるっていう経験をしたことがあるので、あーこういう話かっていう。セカンド系かーって思って。

月ミるな(以下、月ミ):セカンド系(笑)主人公の宇田みこちゃんが素敵な言葉とか思考を持っているのに何でこんなに男運がないんだろうって思った。

絡新婦ぽぴ(以下、ぽぴ):タイトルからもう地獄でこれから「ミッドサマー」観るんだろうなって思ったんですけど、いい意味で地獄じゃないっていうか、宇田みこはダメにはなっていくけど、神話ぐらいに思えた。一周して現実のぐちゃぐちゃが、全部通してみたら神聖なもの、みたいな。人間の奥を観たな、みたいな。のむら作品っていつもそうなんですけど。

月ミ:一瞬の幸せはありましたよね。幸せが来た瞬間、悲しいことがあって、まさにメリーゴーランドの浮き沈みが感じられたというか。

ぽぴ:宇田みこは幸せと不幸せだったら幸せを重きに置いてポジティヴ感があって、ねちっこさがなくて。それがいい人感に繋がるのかな。幸せへの希望が常にずっとあるのかなって。

たんぺ:どの男性が気になった?

ぽぴ:私は水石さん。

月ミ:やっぱり映画監督役が出てきた時が。ボイメンさんも知ってて。

たんぺ:いい男が出てきた〜って思ったね。

月ミ:取り憑かれてる敦海が好きです。ていうかあの夕夏が可愛すぎて。全然お茶拭くよ、素麺どうにかするよって思ったよね。お話し的にはここのカップルの話が一番好きでしたね。最後にもう1回だけ、っていう感じも。

たんぺ:敦海のところに戻ってきた夕夏が、耳元で脚本吹き込むやつがエッチだった。新たな性癖が目覚めそうになった。

月ミ:あと、風船が印象的なシーンが多いですよね。男性1人と関係が終わったときに風船が1個1個上がるところとか、新たな出会いがあると風船が降りてくるところとか。

たんぺ:地獄なのかなって構えて見たんですけどとてもポップに明るく描かれてて。監督ご夫婦の時が観ていて一番地獄だったなって思いました。

最初はエゴだったものが、相手のこともちゃんと考えるようになったらそれが愛になるんじゃない?(たんぺ)

ぽぴ:これを見た次の日にキリスト教の授業を大学で取っていて、「愛について」っていう授業で、苦しみがなければ愛じゃないっていうのを習って。下心なんだとしてもそこに愛があるんだったら、その愛が必要か必要じゃないかっていうことが重要であって。その愛が希望で必要だと思っちゃったんじゃないかな宇田みこちゃんは。純粋なんで。

月ミ:誰かに認められたい感はすごい伝わってきて、それこそミスiDで輝きそうだなとは思いました。宇田みこちゃんは。

たんぺ:男の優しさは下心、っていうのは男友達3人に聞いたらみんな「7割」って言ってましたね。それで逆に女の優しさはなんだろうって考えたら「承認欲求」かなって。認めて欲しいから優しくするというか。愛って何なんですかね。2週間くらい考えて寝れなくなって。

ぽぴ:愛を受け取る側は、それが愛だと信じないと死ぬじゃないですか。純粋な愛なんか求めてたら死んじゃうんだけど、愛は絶対生きるのにいるんで、受け取る側は絶対自分の自己判断になってきますよね、宗教じゃなくて社会的な愛ってなると。そこの矛盾が怖くないですか。与える側と受け取る側で愛がちゃんと伝わらないから。

たんぺ:愛って何…。

月ミ:優しくしたくなっちゃうとかしてあげたいとか、そういうこと?

たんぺ:それもエゴなのかなって思っちゃう時ない?

月ミ:人生自体がエゴじゃない?恋愛とかだって、この人と一緒になりたいとかさ、自分のものにしたいとかさ、一緒に過ごしたいとかこの人の時間をもらいたいとか、愛も恋もエゴなんじゃないんですか?

たんぺ:ふう〜♪

ぽぴ:相手の受け取り方を考えたら愛なんか授けられないし…って考えると、愛=エゴでもおかしくない。愛=親切ではない。

たんぺ:最初はエゴだったものが、相手のこともちゃんと考えるようになったらそれが愛になるんじゃない? ただ自分が一緒にいたいはただのエゴで、相手にも一緒にいてもらいたいって思われたい、相手の負担になりたくない。

ぽぴ:相手からの愛をifで仮定してそれを突き通そうとするのが受ける側と差し出す側の愛。おお…難しい。

たんぺ:愛って何なの…?(遠い目)

ぽぴ:すれ違い?

たんぺ:は〜(ため息)この対談までずっと考えてたけどわからなくて、睡眠時間削ってまで考えるもんじゃねえなって思ったね。

月ミ:心を疎かにしてるんじゃなくて、わからないのも愛っていう答えもあるんじゃないかなっていう、ね。

ぽぴ:だから宗教とかに愛を求めたらわかりやすいのか。キリスト教の愛はこれですって。

たんぺ:は〜(ため息)

月ミ:これで全てわかりきってたら全ての恋愛がとてつもなくうまく行ってるんだろうね。

たんぺ:でも実際そうなったらつまんないじゃん。あとさ、劇中で監督の家に遊びに行って奥さん出てきたときにも「お前もかー!」ってなった。

月ミ:ご飯食べてるときに「美味しいでーす」ってもう冷めてて。いいなって思う人って基本相手がいるんだよ。いい人にはいい人がいるんだよ。

ぽぴ:確かにこの前、大学の新歓でいいなって思った人がインスタ見たら既に相手がいました。

月ミ:既に相手がいるからこその余裕が他の異性をひきつける。

たんぺ:2番目でもいいっていう思考にはならないんだよね、宇田みこは。

ぽぴ:以前好きな人に「1人の人を好きになっても、愛がないけど寄り道したい時って絶対にあるんだよね」って言われたことがあって、ガチでこれ言う人いるんだと思って。世間を知りました。

たんぺ:本気の交際って疲れるからね。そういう人もいるでしょう。

月ミ:私は彼女持ちの人の下心が見えたらすぐ距離とりますね。

たんぺ:えらいね。それが正解。

月ミ:嫌だもん、映画の1シーンみたいにホテルでドアドンドンされたりとかされたくないもん。

ぽぴ:あのシーン、台詞もめちゃめちゃ良かった。

たんぺ:「覚悟があんだよ」って言う、あれが愛だよね。

月ミ:ああ、あれは愛だね!

たんぺ:あとさ、脚本家の敦海が「ちゃんとするから」って言うんだけど、あれ言う人って絶対ちゃんとしないんだよね。

月ミ:お酒に飲まれてるしね。ダメランキング上位ですね。手も出しちゃうし。

たんぺ:夕夏ちゃんに当たり強かったもんね。触れねえだろって。生きてた時からああだったのかな。

月ミ:それでいていなくなると取り乱すしね。あと最初に宇田みこが訪ねる男もね。言い訳する人、嫌です。

ぽぴ:宇田みこちゃん、最初は怒れよって思ってたんだけど観てるうちに怒らないのが良さなんだよなって。

月ミ:宇田みこ演じてる辻千恵さん、着ぐるみの時顔が見えないのに感情がわかる動きというか、上手ですよね。

たんぺ:着ぐるみのデザインも、口角上がってるのに悲しい場面の後は悲しい表情に見えたりして、なみちえさんすごいなって。そういえば24歳って母が私を産んだ年齢なんだよなあ。


ー後藤まりこさんの曲が
世界観と感情を全部昇華させて神話にしてくれてる(絡新婦ぽぴ)

月ミ:仮に自分がセカンド状態で刻一刻と歳をとっていくって想像するとどう?

たんぺ:その場合、自分のことを好きな人をちゃんと置いとくかな。

月ミ:セカンドがセカンド作るのか(笑)

たんぺ:そう(笑)結婚願望があるから、安定した幸せを得る道も確保しておきたいって思っちゃう。自分のこと好きな人と結婚したい。宇田みこちゃんはさ、愛し愛されたかったんだよね。愛したいってことだけであれば2番目でもいいわけじゃん。私は最初、愛されたかったんだけど。最近は愛したいにシフトしてるかも。KinKi Kidsも歌ってたけど。

ぽぴ:私は同じ熱量を与えたら同じ熱量で返ってくれたら理想ですね。juice=juiceも歌ってたけど。

月ミ:向こうの熱量が多くて、こっちの熱量が向こうに勝てない感じなのを向こうが分かって受け入れてくれるならいいなって思う。

たんぺ:上回りたくないし上回られたくないし、恩着せがましくなりたくない。そうなってくると1番同士は疲れるし2番目でいいのかもって思えてしまうこともある。私ならサングリア頭からかけられても、えー。そうですよねー、って思って終わり。田中真琴さんがアップロードした動画が広まって、別の女性との不倫報道が出たシーンすごかったね。

ぽぴ:そこに愛があったのか、映画監督の嫁っていうのが良かったのかわからない。あと、着ぐるみをしながらセックスするシーン良かったです。何回もやってる人じゃないとニッチな層に向けてああいうことやらないと思うんですよね。

月ミ:あとさ、後藤まりこさんの曲がめっちゃ良かったよね!

ぽぴ:本当に。世界観と感情を全部昇華させて神話にしてくれてる。

月ミ:後藤さんの「LSD」が流れてみんな風船を持って楽しげなところ、胸がいっぱいになるというか。風船の数が与えた愛の数なのかな。最後、同僚と一緒になって欲しいなって思って見てたけどあいつも女いますからね。やっぱり身近にいるんだよ〜♡…って思ったら、お前もか!っていう
…。

ぽぴ:逆にそこで同僚がいい人だったら宇田みこちゃんが宇田みこちゃんじゃなくなっちゃうっていうか、可哀想なところとかダメなところもあって聖なるものに昇華している感があるから。最後に幸せになったらこの人たちの業を背負ったように見えちゃったと思う。のむら監督の映画って魂に触れるんですよね。その体験は何回経験してもいいことだと思う。

たんぺ:愛って何なんですかね、本当に…。(遠い目)

◉作品情報
『男優しさは全部下心なんですって』

出演:辻千恵、水石亜飛夢、森蔭晨之介、五味未知子、田中俊介、田中真琴、こだまたいち、安倍乙、木口健太、上田操、加藤才紀子、原田大二郎
監督・脚本・編集:むらなお|音楽・劇中歌:DJ後藤まりこ|着ぐるみデザイン・制作:なみちえ
企画・配給:絶好調ちっちゃいも倶楽部|配給協力:SPOTTED PRODUCTIONS
©️2019 絶好調ちっちゃいも倶楽部